「1対1」の指導に特化した学習塾を展開する(株)セレクティー(個別教室のアップル)。長年、子どもたちの課題に触れてきた畠山代表は、PTAや学校など多くの機関と連携しながら、子どもたちの等身大の自尊心、健全な自己受容に焦点を当てた「自己肯定感醸成セミナー」を展開しています 。その広がりと影響力、社会課題へのアプローチと地域への貢献が高く評価され、「仙台『四方よし』企業表彰」で2018(平成30)年度大賞に輝きました。
「入試だけがゴールではない」と考える畠山代表。困難に挑戦する力、生き抜く力の源泉となる「心のエンジン」を動かしたい、と語ります。
―2018(平成30)年度の仙台「四方よし」企業大賞受賞後、どのような変化がありましたか。
おかげさまで知名度・認知度がアップしました。特に個別教室のアップルの会員とそのご家族、採用希望者の安心に繋がり、大賞を受賞した取り組みである「自己肯定感醸成セミナー」の講演依頼も増えました。
また、受賞をきっかけに社員と会社の理念や目的意識を再確認できた、一体感を醸成できたという効果も大きかったです。受賞したのは会社設立から22年目の年でしたので、創業期・成長期を経て、発展・拡大期へと移行していく後押しになったように感じます。
また、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしに加えて、働き手よしの「四方よし」は、人材採用の折の大きなアピールポイントにもなります。本来であれば大企業への就職が叶うような優秀な人材が、当社の扉を叩いてくれるのはうれしい限りです。
―貴社の設立は1996年。畠山代表はどのような理想と信念の下、「個別教室のアップル・家庭教師のアップル」を立ち上げられたのでしょうか。
私は教員として自分のキャリアをスタートしました。さまざまな能力・個性、バックグラウンドを持つ子どもたちの多様性は、素晴らしい可能性です。しかし、1クラス約40名、その生徒一人ひとりの学力や意欲、学習速度、理解度に合わせた指導に難しさと限界を感じることがありました。生徒個々の悩みや困難のサポートという局面ではなおのこと、もっときめ細やかに向き合っていく必要があるのでは、と。一人ひとりに寄り添い、子どもたちの豊かな潜在力を引き出し、知的ならびに精神的な成長へと導いてあげることができたなら…という思いが募り、1対1の個別指導の教室を開塾することになったのです。
―マンツーマンとなると、理解度に合わせた指導や苦手分野の克服など二人三脚での学習のほかに、心のサポートという大きな利点があるかと思います。生徒さんとのマッチングなど工夫されている点はありますか。
講師は、学習指導者であり、目標に向けて共に伴走するメンター(知識や経験が少ない者をサポートする助言者)でもあるので、とても重要です。気の合う先生、好きな先生との学習は、モチベーションの維持にもつながるので、生徒さんからの感想や意見を活かしてコーディネートしています。
講師の採用に際しては、知識水準はもちろんコミュニケーション能力や意欲、情熱を慎重に判断しています。
当塾は、地下鉄駅の近くに教室を展開しています。最近の若い世代は、タイムパフォーマンスや費用対効果を重視する傾向があるため、交通の利便性を重視することで、優秀な人材(講師、チューター) を獲得することができています。採用面での優位性のほか、地域密着型の塾であることを訴求できているように思います。
―近年の入試は情報戦という側面があり一般選抜に加え、推薦型、総合型(旧・AO入試)など、その方法も多様化していますが、それらに対する対策はいかがでしょうか。
大学入試に関しては、総合型選抜(高校3年間の活動実績に加え、小論文、面接・グループディスカッションなどを交えて、資質や能力、適性を評価)が増えています。短期間では乗り切れないこの入試スタイルこそ、オーダーメイドの指導を行う1対1の個別教室の強みが発揮できるところで、学業の積み重ねと弱点の克服に向けて3年間しっかりと伴走します。1対1指導の他にも、立地戦略に基づく教師の確保、学校や家庭とのきめ細やかな連携を強みに他社との差別化を図り、今後の事業展開を進めていきたいと考えています。
一方で、私は「入試がゴールではない」と考えています。人生におけるさまざまな課題や困難に立ち向かうためには、子どもたちが他人からの評価に左右されずにありのままの自分を受け入れ、自信を持っていろいろなことに挑戦するマインド=生きる力を養うことが不可欠です。 大切なのは良い面、弱点も含めて自分を好きになること。そうした自己肯定感が、成績の良し悪しに限らず、辛いことがあっても踏ん張れる、困難を乗り越えられる力の源泉になるのではと考えました。
―それが、「仙台『四方よし』企業表彰」で評価された「自己肯定感醸成セミナー」なのですね。
最近の学校教育の現場では、自身の学習目標や目指す到達点に対してどのぐらいの位置にいるかをみる絶対評価が積極的に取り入れられているようですが、成績などは他者との比較による相対評価が軸になっています。小中学校の多感な成長期において「比べられる」ことは、自信や意欲の欠如、自己肯定感の低下につながっていきます。いじめや不登校にもつながりかねませんし、友だちとのコミュニティのなかでも、健全で良好な関係を築くことが難しくなります。
自尊感情を高め、ありのままの自分を価値ある存在と認めるための導きとテクニックを、教育行政関係者、学校関係者、保護者の方に向けて発信しています。セミナーを開始して13年、聴講者は延べ2万人を超え、地域も、仙台・宮城を飛び出し、首都圏~中部地域、オンラインで…と広がっています。受講された方からは「具体的な方法なので、すぐにでも活用できそう」「子どもだけでなく自分の自己肯定感を高めるきっかけをいただいた」など、多くの感想をお寄せいただいています。中には地域の保護者の方々とセミナー内容を共有したり、勉強会を開いたりしている方もいらっしゃるとのことで、とてもうれしく思っています。教育課題解決の一助となれるよう、これからも力を注いでいきたいと思います。
―仙台「四方よし」企業表彰では、多様な働き方やワークライフバランスの取り組みも評価されました。取り組みの一つとして、貴社ではコロナ以前よりテレワークを導入されていたようですが、どのような経緯で導入に至ったのでしょうか。
社員から「結婚して県外に引っ越しても働き続けたい」「出産後すぐにはフルタイム勤務に復帰できない」などの声を受け、幸いなことにネットワーク設定やセキュリティ、クラウドサービス運用の知識を持つ人材がいたことも相まり、テレワークの導入が実現しました。当時は地元テレビ局でも紹介されたほど珍しい試みだったようです。
東日本大震災後は、私たちなりに何か貢献できないかと震災遺児の無料学習支援を展開してきましたが、すでにオンライン授業のノウハウの蓄積があったので、スムーズに授業を提供することができました。
社内においても毎朝のミーティングをオンラインで行い、課題や成果などをスピーディーに共有しています。
―2014年には『ダイバーシティ経営企業100選』(経済産業省)に選出されました。人材登用・配置に対してはどんなお考えをお持ちですか。
女性、男性関係なく、持てる資質と能力を最大化できるポジションに、というのがポリシーです。先入観や思い込みを排して、人材を起用し、ライフワークバランスに向けた休暇制度を推奨することで、イキイキと働く女性が増え、2020年には宮城県の「女性のチカラを活かす企業」ゴールド認証の獲得に繋がりました。
当社では、集中力や感情に揺らぎがあるお子さん向けの学習サポートにも取り組んでいますが(一般財団法人学習能力開発財団Lead)、講師のほとんどを女性が占めています。学習が難しいお子さんを根気よく見守り、柔軟に対応してくれています。
―最後に今後の新しい展開、戦略についてお聞かせください。
今後も、「自己肯定感醸成セミナー」や地域社会への貢献や職場環境づくりに向けた取り組みを通じて、企業、学生、社員がそれぞれの持ち味を最大化できるような環境を整えていきたいと思います。また、大きな期待を寄せているのが「1対1」の指導・レクチャーの可能性です。リスキリング、リカレント教育、生涯学習などと個別学習は非常に親和性が高いのです。実際に私たちはシニア向けのマンツーマンのスマホサポート(授業)、女性のためのマンツーマンのパソコンサポート(授業)など行っていますが、マンツーマンは習得・理解のスピードが格段に速くなります。知識の翼は、世界へと飛翔する動力となります。たくさんの人の学びへのチャレンジを応援していきたいと思います。
企業情報
株式会社 セレクティー
業種 | 教育・学習支援業
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住所 | 宮城県仙台市宮城野区榴岡4-5-17 アップルスクエア仙台東口3階 |
TEL | 022-223-5001(代表) |
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