SENDAI CORE COMPANY ~仙台市 地域中核企業~

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HOMEARTICLE石黒建築工房 代表取締役 石黒大 café craft カフェマネージャー 企画広報室室長 石黒妙

地域貢献 人材 職場環境の整備 2025.04.08

建設業とカフェのシナジー効果で仕事の価値向上へ

石黒建築工房 代表取締役 石黒大 café craft カフェマネージャー 企画広報室室長 石黒妙

不動産業・建設業

自社が持つ建築技術と発想力、一人一人に寄り添う力で、「暮らしをもっと楽に、もっと楽しく!」がコンセプトの株式会社石黒建築工房。大工職人を社員として雇い、設計から施工までの一貫体制で、オーダーメイドの家や店舗を手掛けるものづくり企業です。工務店の隣で経営する『café craft』は、ものづくり体験ができる工房を備え、さまざまなイベントも開催。「子育て応援カフェ」としても仙台市内のママたちに広く知られています。石黒社長は、職場環境の整備など、建築業界のイメージを変える取り組みにも積極的です。

建築業界に一石を投じる労働環境の整備

建築業界には、「残業が多い」「雇用条件が良くない」など、労働環境にネガティブなイメージを持つ人が少なくありません。そんな中で、社長は以前から労働環境の整備に取り組み、仙台「四方よし」宣言企業に登録されました。

石黒社長/私は大学の経済学部を卒業し、大工の弟子から建築業界に入りましたが、そこは社会保険がなく国民健康保険が当たり前の世界。会社の傘があるようで、実態は個人事業主の集まりでした。その後に入ったリフォーム会社は、労働状況が過酷で社員が疲弊していく職場。社会保険はなく離職率も高かったのです。夢を持った若い子が入社しても、辛い環境で辞めざるを得ない。その状況が悩ましくて、建築業界に労働環境の整った会社が本当にできないのか、自分でやってみようと独立しました。いい建物を造りたいという思いと同じくらい安心できる労働環境をつくりたかったんです。利益だけを追求するのではなく、地元に根差し、働き手を大切にする企業でなければならない。「四方よし」という言葉は、それを的確に表現している言葉ですよね 。

「大工はすばらしい仕事なのに、世間の評価が見合わないことがもどかしく思っていました。大工や、その技術の価値を伝える側になりたいとも思ったんです」と石黒社長。

―石黒社長は大工職人を経て起業されていますが、大工職人やものづくりに対してはどのような思いをお持ちなのでしょうか。

石黒社長/当時は、自分の生きる道はここしかないと決めて、朝から晩まで技術のことばかり考えて働きました。技術面ではとても厳しい師匠でしたが、努力を認めてくれるので楽しかったですよ。その一方で、技術者に対する周囲の評価の低さや不当な扱いを感じる場面も多々ありました。大工の仕事の素晴らしさが周知されないことがもどかしく、それを伝える仕事をしたいとも思いました。
学生の頃に喫茶店で働いた経験があるのですが、カウンターごしに接客していると、お客様がマスターに気を許していろんな話をします。そういう環境なら、ものづくりの楽しさや大工という仕事の魅力など、自分の伝えたいことが心の深いところに届くのではないかと思い、カウンターがあって、ものづくりの工房が見えるカフェをつくろうと考えました。職人の仕事は大好きでしたが、その夢を叶えようと思ったんです。リフォーム会社に勤務した後、2002年に石黒建築工房を創業し、2013年にcafé craftをオープンさせました。

創業前から構想していた、ものづくりの工房が見えるカフェ。「子育て応援カフェ」としても知られている。

人材定着につながる「仕事のやりがい」

「働き手よし」な職場環境はどのように整備を進められたのでしょうか。

石黒社長/職場環境については、会社が儲かってからではなく、社員が1人のときから社会保険など最低限のものはすべて整えました。私にとって、いい職場環境をつくることが経営者として一つの夢でしたし、それは今も変わりません。一昨年と昨年は、通常の昇給とは別に、近年の物価上昇に合わせて3%のベースアップも行いました。残業が多いイメージの建築業界ですが、過度な残業、サービス残業などは一切ないように、1分単位の勤怠アプリを導入して管理しています。

石黒妙マネージャー/カフェではパートの方にも有給休暇を付与しています。スタッフは全員、有給休暇をすべて使っていますよ。子どもがいる方がほとんどなので、お互いに譲り合いながら上手に利用しています。産休・育休後は全員が復職していますし、うれしいことに、「こんなに働きやすい職場はない」と言ってくれて、一度退職してほかの会社を経験した後に、また戻ってくる方もいるほどです。

勤続10年、20年の社員も多いそうですが、人材定着の理由はどこにあるのでしょう。

石黒社長/仕事にやりがいがあることが一番ではないでしょうか。当社は、打ち合わせを何十回と重ね、お客様のイメージや要望をとことん掘り下げます。生活する上での困りごとや悩みなど、心の奥底にある本音を聞き出すことを重視しているんです。建築業ではありますが、家づくりを通して悩み事を一つでも多く解消し、心の負担を軽くするのが私たちの仕事。家具や家電を置く場所も決めて設計しますし、普段使っているゴミ袋のサイズまで細かく伺い、ぴったりの収納も作ります。
オートクチュールの家なので、当然要求されるスキルも高くなります。そのため、職人自身も技術への追求心が深まり、モチベーションや使命感につながるのだと思います。
 また、社員同士の距離も近いと思います。オフィスの中に人形を飾ったり(取材当日は、共用スペースに8段飾りのひな人形が)、かわいいデザインを施したりという空間づくりも大切な気がします。ビジネスライクなオフィスだと関係性も事務的になりがちですが、当社では、休憩時間に共用スペースで一緒に体を動かす姿や、就業後に餃子パーティを楽しむ光景が普通に見られます。当然、業務をきちんと行った上でのことですが、そういう空気感を醸成することも大切。社員が会社に対する猜疑心を持たず、安心して働けるのが一番の強みだと感じます。

―やりがいを感じながらスキルも身に着けられる理想の職場ですね。勤続年数の長い方が多いことも納得です。

石黒社長/長い間一緒に働いていると、スタッフとの信頼関係が出来上がっているので、定年後も希望があれば満65歳まで契約社員として再雇用する『定年退職者再雇用制度』も設けています。それでも、65歳になったら関係が終わるわけでなく、例えば事業を始めたい人がいたら声を掛けてほしいし、力になりたいと思っています。

お客様との打ち合わせや社内会議に使われるミーティングルーム。ここでは社内企画で抽選会や餃子パーティをやることも。
家づくり・お店作りのための材料の加工や家具製作を行う工房。

ものづくりの楽しさと職人の価値を伝える

カフェ内の「手作り家具工房」では、プロの指導のもとで、工具を自由に使ってものづくりができるそうですね。

石黒社長/椅子やテーブル、学習机など、作りたいものに対して設計からアドバイスしています。ものづくりを身近に感じてもらうこと、楽しさを知ってもらうことを目的にしていて、私自身のライフワークにもなっています。作る過程で楽しさも難しさも体験するので、完成したときは皆さん感動しますよ。普段、家具を買っても記念撮影はしないと思いますが、工房内では、出来上がった家具と一緒に皆さん笑顔で記念撮影をするんです。

石黒妙マネージャー/手作り家具工房は会員制ですが、カフェでは親子で気軽にものづくりができるワークショップやイベントも開催しています。告知をするとすぐに応募が集まるほど好評なんですよ。カフェから飛び出して、「おでかけクラフト」と題した木育のイベント出店もしています。

石黒社長/ものづくりをすると、体験者の口から自然と「木を切ることがこんなに難しいと思わなかった」「大工さんってすごいですね」という声がこぼれます。その言葉を聞くたびに、職人の価値を上げることに貢献できていると感じますね 。

「手作り家具工房」の会員数は250名程。「どこで買ったの?と聞いてもらえるクオリティの家具づくりを目指している」と石黒社長。

真の価値を創造し、強みを生かして誠実に

分野が違う工務店とカフェの経営は、社内にどう影響していますか。

石黒社長/カフェがあることで、建築会社なのにたくさんの人が集まり、社屋に子どもたちの元気な声も響きます。技術者の中にはコミュニケーションが苦手な人も多いのですが、自然と「いらっしゃいませ」を言えるようになったり、カフェがお客様との会話のきっかけになったりしているようです。

石黒妙マネージャー/カフェは社員食堂の役割も担っていて、社員はワンコインで食事ができるんですよ。カフェはカフェ、建築は建築と完全に分けず、チームとして一緒に働いています。ものづくりのワークショップを行うときも、準備段階で建築事業のスタッフに「こういうイベントを考えているんだけどどう思う?」などと聞いて、プロの視点でアドアイスをもらうこともよくあります。

カフェの目的が本業の顧客獲得でないことは、地域に愛されている様子からも伝わります。

石黒社長/もちろん、ご縁があって家づくりにつながるのはうれしいですが、それが目的ではありません。パティシエを社員として雇っていますし、スイーツも食事も手作り。一つ一つ丁寧にやってきた結果、多くの方に集まってもらえる居心地がいい空間ができたのだと思います。ものづくりに関しても、カフェという入口があると気軽に体験しやすいですよね。

カフェのメニュー・企画は石黒妙カフェマネージャーが担当。パティシエが入社し、手作りの商品を提供している。

「子育て応援カフェ」は「世間よし」として地域貢献の役目も果たしていますね。

石黒社長/オープン当初は、工房とカフェがもっと近い距離にあったのですが、一角にあったキッズスペースとその隣のソファ席が大人気で、「子ども連れのママはそんなに居場所に困っているんだ」と、工房を移し、小上がりを増設しました。

石黒妙マネージャー/2021年からは、「おさがりフリマ」を開催しています。カフェのお客様に向けたフリーマーケットで、使わなくなった子ども用品を次の子育て世代にお譲りするSDGs活動の一環です。回を重ねるごとに来場者も増えていて、中にはお子さんが店員になってお手伝いするお店も。お店側とお客様の交流やお子さんの活躍など、本来の目的以上に意味のあるイベントになっています。

お客様の多くはお子様連れ。子育て応援カフェとして子育て世帯に安心の場を提供している。

ものづくりをキーワードに地域に根差した事業展開をされていますが、今後の展望もお聞かせください。

石黒社長/私たちは“真価”を大切にしています。付加価値というのは、後から付けるものではなく、初めからあるもの。真の価値がなければお客様に選ばれることはありません。当社の「寄り添う力」には大きな価値があると思うので、これからもひたむきに家づくりや店舗づくりを行って、未来につながる会社にしたいですね。
経営面では、規模拡大よりも、お客様にとってもスタッフにとっても、いい会社をつくることが目標です。利益が出たらみんなに分配し、働く環境の質もどんどん上げていきたいと思っています。そして、社員に夢ができたら、それを叶える応援もしたいですね。

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企業情報

株式会社石黒建築工房

建築工事の設計・施工・監理、カフェ事業

業種
不動産業・建設業
住所
仙台市宮城野区鶴ヶ谷字京原200
TEL
022-388-1496
HP

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